※本記事はフィギュア撮影に関する著作権を解説し、その上で本二次創作活動を今後どうしていくか思案したものです。
他のブログ記事を見ればお分かりいただけると思いますが、私は趣味でポケモンフィギュア写真を撮影してTwitterやブログで紹介する活動をしています。
最初はほんとに数人の方が見てくれるささやかな活動ですが、最近は多くの方に見ていただけるようになりました。
嬉しい反面、ある危機感を抱きました。
それは「この活動は著作権侵害にあたるのか」ということです。
当然、任天堂やBANDAIに許可をとって撮影・発信しているわけではありませんので…。
今までは「法的にはグレーゾーンなんだろうな」「みんなやってるし大丈夫だろう」と軽い認識でいました。
しかし閲覧者が増えたということは影響力も大きくなっているわけで、今まで以上に著作権に関する知識を持ち、その上で今後の活動をどうするのかを考えることが必要だと感じました。
ネット上にある情報は煩雑しており、いまいち納得できる答えが見つけられなかったので、京大の図書館で著作権法に関する本を数冊読んで勉強しました。
「フィギュア写真の」と題していますが、全ての二次創作活動やSNS発信に共通することが多いので、このブログやTwitterを見てくださる方にはぜひ最後まで一読していただきたいです。
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(目次)
1. フィギュア写真は著作物なのか
2. フィギュア撮影に関わる著作権
3. フィギュア撮影は違法か
4. なぜ二次創作が発展しているのか
5. 二次創作に対する告訴
6. 二次創作者はどうすればよいのか
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1.フィギュア写真は著作物なのか
そもそも著作物とは何でしょう。
著作権法第二条において、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」となっています。
具体的な例も挙げられており、その中には「写真」や、被写体のフィギュアが該当する「美術品」の項目があります。
つまり、フィギュアやそのキャラクターのデザインについても「美術品」という著作物であり、それを撮影したフィギュア写真もまた著作物となります。
フィギュアを正面から撮影しただけの写真の場合は「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当たるかは微妙ですが、撮影趣味の人が撮るような構図や画角に拘った写真は著作物であると言えます。
結論を言えば、フィギュア写真はれっきとした著作物であり、著作権者はもちろんその撮影者となります。同人絵、自作フィギュアなども同様です。
ならばフィギュア写真は著作権者である撮影者が好きに扱って良いものなのでしょうか?
・・・もちろん答えはNOです。これについては次章で解説します。
2.フィギュア写真に関わる著作権
著作権といってもその内訳は十数種に及びます。その中で二次創作に大きく関係するものだけを順に見て行きます。
① 複製権
その名の通り、無断で著作物を複製してはならないというものです。
コピー機はもちろん、印刷や写真撮影も含まれますし、録音や手で書き写す行為も複製に当たります。
それでは「テレビ番組を録画したり、遊園地でキャラクターの写真を撮るのもダメなの?」ということになりますが、この複製権については「私的使用のための複製」という例外規定があります。
具体的には「個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲で使う」のであれば許可なく複製が可能ということです。
ではフィギュア写真をSNSに投稿するのは「私的使用」に含まれるのでしょうか?
② 公衆送信権
こちらは著作物を無断に放送してはならないというものです。
そしてこの公衆送信には、Twitterやブログ等のSNSも当然含まれます。たとえ閲覧したのがごく数人であっても、多数の人(公衆)が見る場所にアップロードすれば公衆送信となります。
先ほど「SNSへの投稿は『私的使用』の範囲に含まれるか?」と述べましたが、複製権がどうこう以前に公衆送信権の侵害となるため、そもそも論外であるというわけです。
公衆送信についても例外規定があり、2012年に導入された「付随的利用」の規定において、写真に偶然入り込んでしまったものについては問題なく利用できます。
具体的には「対象物から分離困難なため入り込んでしまう軽微な構成物」とあるため、フィギュア撮影においては「偶々写っただけ!」などと言い逃れはできませんね…。
③ 譲渡権
今度は著作物を無断で販売・配布してはならないというものです。
他人の著作物で儲けようとするのは論外として、非営利でも無料配布でも譲渡権の侵害となり得ます。
ただし「一度流通に乗った著作物については譲渡権の侵害にはならない」という例外規定(消尽理論)があります。従って購入した写真やフィギュアそのものを中古販売、転売することは譲渡権を侵しません。
即ち譲渡権は海賊版や盗作など、複製物の販売にはたらくものといえます。
④ 翻案権
分かりにくい名前の権利ですが、この権利が最も重要な権利です。
翻案とはいわゆる、パクリ、アレンジなど、著作物を模倣したり手を加えたりすることです。これを無断で行うと翻案権の侵害となります。
そして許可があるにしろないにしろ、翻案によって作られたものを「二次的著作物」と言います。
前章で「フィギュア写真も著作物であり、著作権は撮影者にある」と言いましたが、これはあくまで二次的著作物の著作権というわけです。
では二次創作の著作権は、一次創作の著作権と何が違うのでしょうか。
⑤ 二次的著作物の利用権
例えばある小説が漫画化して、更にその漫画を元に映像化しようとする場合。その際は漫画の著者に加え小説の原作者にも許可をもらうことが必要です。
つまり二次的著作権の利用権は原作者にもはたらくものなのです。
従って、たとえ二次的著作物が許可を得て作られたものでも、原作者の許可なしに各権利を行使することはできないわけです。
3.フィギュア写真撮影は違法か?
今までの話をまとめますと、
・フィギュア写真を個人利用を超えた範囲で使うと、複製権の侵害になる。
・フィギュア写真をSNSで発信したら公衆送信権、配布・販売したら譲渡権の侵害となる。
・フィギュア写真の著作権は撮影者にあるが、それは二次的著作物の著作権であり、原作者の許可なしに権利を行使することはできない。
となります。
つまり「ごく少数の仲間内でSNSを使わずフィギュア写真を楽しむ」のであれば違法とはなりませんが、ネット上で活動した時点で各著作権の侵害となる可能性が高いです。
以前ネットで著作権のことを調べた際には「フィギュア写真は三次元→二次元だから複製じゃない、セーフ!」という暴論も見かけましたが、
先ほど例に挙げた「小説→漫画→アニメ」のようにフィギュア撮影も表現方法を変えただけであり、フィギュア写真が一次著作物である元のデザイン、その二次著作物であるフィギュアを使用した三次著作物であることは明らかです。
私の撮影しているポケモンキッズであれば任天堂とBANDAIの許可を得ない限りは翻案権の侵害となるでしょう。
結論を言えば私も含めて、フィギュア写真を撮影してネットに公開することは、
「グレーゾーン」ではなく明らかに「黒」であると言えます。
同じ理屈で、既存キャラクターを模した絵・フィギュア・アクセサリーをSNSに上げたり、販売したりすることも著作権の侵害になることは明らかでしょう。
4.なぜ二次創作が発展しているのか
では、なぜ違法であるのに日本では二次創作文化がここまで発展しているのでしょうか。
フランスやスペインでは「パロディ規定」という「パロディやパスティーユ、風刺は許す」と明文された規定があり、アメリカでは「原作で市場に損害を及ぼさない公正な利用は許す」と規定した「フェアユース」という例外規定があります。
日本にこのような明確な例外規定はありません。
それでも二次創作文化が花開いた理由について、著作権を専門とする弁護士、福井健策氏は「権利者と二次創作者の『阿吽の呼吸』で二次創作は育まれてきた」と著書で述べています。
創作者側は「どこまでなら怒られないか」、権利者側は「どこまでなら放置するか」距離感を測りながら、互いにWin-Winの関係になるラインを保っているというわけです。
この関係が成立するのは、日本が暗黙の了解をよく承知する文化であるからということもありますが、他国と違って二次創作に対する刑事告訴が親告罪となっていることが大きいです。
即ち権利者自身が悪質だと判断して刑事告訴しない限り、起訴・処罰はされません。
つまり違法であっても権利者がセーフと言えばセーフだし、第三者が「それは著作権侵害だ!」と言っても意味がない訳です。
こうした現状を鑑みて、2013年に文化庁が出した「パロディと著作権」についての調査報告書においても「日本ではパロディ規定のような明文のルールをすぐに導入するより、現状を温存する方が良いかもしれない」という趣旨の報告書が発表されています。
5.二次創作に対する告訴
前章で述べた通り、著作権侵害は親告罪であるため権利者が腰を上げないと告訴に至らず、日本において二次創作が起訴されることは多くありません。
先ほど「阿吽の呼吸」と言う表現を紹介しましたが、この呼吸が崩れた時に企業が二次創作を訴える事態が起こります。
1998年に起きた二次創作界隈の有名な事件として「ポケモンアダルト同人誌事件」というものがあります。名の通りポケモンのアダルト同人誌を300部ほど印刷・売買したことをゲームフリークが告訴したものであり、制作者は逮捕され10万円の罰金を課されました。
この事件には先ほど挙げた5つの著作権には含まれない、同一性保持権というものが関わってきます。
これは複製といった著作権者の許可の有無に関わらず、「著作者の意に反するような改変は著作者人格権を侵害する」という法律です。
要するに著作物に対する名誉毀損のようなものです。
著作権について、ポケモン側は公式サイトでこのように述べています。
"キャラクター・画像・音楽の使用につきましては、法律により認められた範囲内での使用に留めていただき、それを超える利用につきましては控えていただきますようお願いいたします。特に、キャラクターのイメージを損なうような画像などをインターネットへアップロードするのはご遠慮ください。"
http://www.pokemon.co.jp/support/other_inquiry/#q01
法律に従うよう忠告した上で、「特に」と強調して同一性保持権の遵守を呼びかけられています。
二次創作は違法であれ見逃されることが多いですが、それが同一性保持権、即ちキャラクターのイメージを損なうようなものであった場合、告訴に至る可能性が高くなると考えられます。
6.二次創作者はどうすればいいのか
結局、我々二次創作を趣味とする者たちはどうすればいいのか。
綺麗事を言えば、SNSやブログ、コミケをやめて個人で細々と楽しむのが最適解なのでしょう。
しかし、ここまで身近な場所で二次創作がオープンに行われている中で細々と楽しむのでは、欲求不満に陥ってしまいコンテンツ自体から去ってしまう人も少なくないでしょう。
今まで述べてきた内容を踏まえて、私が得た結論は
「原作へのリスペクトを忘れず、二次創作活動を行う」
これに尽きると思います。
具体的には、
自分の二次創作は権利者の利益を損なわないか、原作のイメージを損なわないか、創作する前に必ず立ち止まって考えること。
そして創作したものを世に出す時は説明を怠らないことです。
これは自分の活動が「原作者が儲かって作品が存続することで初めて成り立つものである」という「原作へのリスペクト」を忘れなければ、自ずと弁えられることだと思います。
私のポケモン撮影の活動も、違法であるが見逃してもらっているという事実と、ポケットモンスターの全コンテンツへのリスペクトを忘れず、地に足をつけて続けていきたいと思います。
ここまで長文を読んでくださった方、ありがとうございました。
それらしいことを書いていますが、所詮理系大学生が1日勉強しただけの内容ですので至らない部分もあると思います。
誤解している箇所等あればコメントやTwitter等でご教授していただけるとありがたいです。
<参考文献>
文化庁(2013)『著作権法入門 2013-2014』 公益社団法人 著作権情報センター
公益社団法人 日本写真家協会(2016)『写真著作権 第2版』太田出版
福井健策(2015)『18歳の著作権入門』株式会社精興舎
他のブログ記事を見ればお分かりいただけると思いますが、私は趣味でポケモンフィギュア写真を撮影してTwitterやブログで紹介する活動をしています。
最初はほんとに数人の方が見てくれるささやかな活動ですが、最近は多くの方に見ていただけるようになりました。
嬉しい反面、ある危機感を抱きました。
それは「この活動は著作権侵害にあたるのか」ということです。
当然、任天堂やBANDAIに許可をとって撮影・発信しているわけではありませんので…。
今までは「法的にはグレーゾーンなんだろうな」「みんなやってるし大丈夫だろう」と軽い認識でいました。
しかし閲覧者が増えたということは影響力も大きくなっているわけで、今まで以上に著作権に関する知識を持ち、その上で今後の活動をどうするのかを考えることが必要だと感じました。
ネット上にある情報は煩雑しており、いまいち納得できる答えが見つけられなかったので、京大の図書館で著作権法に関する本を数冊読んで勉強しました。
「フィギュア写真の」と題していますが、全ての二次創作活動やSNS発信に共通することが多いので、このブログやTwitterを見てくださる方にはぜひ最後まで一読していただきたいです。
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(目次)
1. フィギュア写真は著作物なのか
2. フィギュア撮影に関わる著作権
3. フィギュア撮影は違法か
4. なぜ二次創作が発展しているのか
5. 二次創作に対する告訴
6. 二次創作者はどうすればよいのか
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1.フィギュア写真は著作物なのか
そもそも著作物とは何でしょう。
著作権法第二条において、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」となっています。
具体的な例も挙げられており、その中には「写真」や、被写体のフィギュアが該当する「美術品」の項目があります。
つまり、フィギュアやそのキャラクターのデザインについても「美術品」という著作物であり、それを撮影したフィギュア写真もまた著作物となります。
フィギュアを正面から撮影しただけの写真の場合は「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当たるかは微妙ですが、撮影趣味の人が撮るような構図や画角に拘った写真は著作物であると言えます。
結論を言えば、フィギュア写真はれっきとした著作物であり、著作権者はもちろんその撮影者となります。同人絵、自作フィギュアなども同様です。
ならばフィギュア写真は著作権者である撮影者が好きに扱って良いものなのでしょうか?
・・・もちろん答えはNOです。これについては次章で解説します。
2.フィギュア写真に関わる著作権
著作権といってもその内訳は十数種に及びます。その中で二次創作に大きく関係するものだけを順に見て行きます。
① 複製権
その名の通り、無断で著作物を複製してはならないというものです。
コピー機はもちろん、印刷や写真撮影も含まれますし、録音や手で書き写す行為も複製に当たります。
それでは「テレビ番組を録画したり、遊園地でキャラクターの写真を撮るのもダメなの?」ということになりますが、この複製権については「私的使用のための複製」という例外規定があります。
具体的には「個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲で使う」のであれば許可なく複製が可能ということです。
ではフィギュア写真をSNSに投稿するのは「私的使用」に含まれるのでしょうか?
② 公衆送信権
こちらは著作物を無断に放送してはならないというものです。
そしてこの公衆送信には、Twitterやブログ等のSNSも当然含まれます。たとえ閲覧したのがごく数人であっても、多数の人(公衆)が見る場所にアップロードすれば公衆送信となります。
先ほど「SNSへの投稿は『私的使用』の範囲に含まれるか?」と述べましたが、複製権がどうこう以前に公衆送信権の侵害となるため、そもそも論外であるというわけです。
公衆送信についても例外規定があり、2012年に導入された「付随的利用」の規定において、写真に偶然入り込んでしまったものについては問題なく利用できます。
具体的には「対象物から分離困難なため入り込んでしまう軽微な構成物」とあるため、フィギュア撮影においては「偶々写っただけ!」などと言い逃れはできませんね…。
③ 譲渡権
今度は著作物を無断で販売・配布してはならないというものです。
他人の著作物で儲けようとするのは論外として、非営利でも無料配布でも譲渡権の侵害となり得ます。
ただし「一度流通に乗った著作物については譲渡権の侵害にはならない」という例外規定(消尽理論)があります。従って購入した写真やフィギュアそのものを中古販売、転売することは譲渡権を侵しません。
即ち譲渡権は海賊版や盗作など、複製物の販売にはたらくものといえます。
④ 翻案権
分かりにくい名前の権利ですが、この権利が最も重要な権利です。
翻案とはいわゆる、パクリ、アレンジなど、著作物を模倣したり手を加えたりすることです。これを無断で行うと翻案権の侵害となります。
そして許可があるにしろないにしろ、翻案によって作られたものを「二次的著作物」と言います。
前章で「フィギュア写真も著作物であり、著作権は撮影者にある」と言いましたが、これはあくまで二次的著作物の著作権というわけです。
では二次創作の著作権は、一次創作の著作権と何が違うのでしょうか。
⑤ 二次的著作物の利用権
例えばある小説が漫画化して、更にその漫画を元に映像化しようとする場合。その際は漫画の著者に加え小説の原作者にも許可をもらうことが必要です。
つまり二次的著作権の利用権は原作者にもはたらくものなのです。
従って、たとえ二次的著作物が許可を得て作られたものでも、原作者の許可なしに各権利を行使することはできないわけです。
3.フィギュア写真撮影は違法か?
今までの話をまとめますと、
・フィギュア写真を個人利用を超えた範囲で使うと、複製権の侵害になる。
・フィギュア写真をSNSで発信したら公衆送信権、配布・販売したら譲渡権の侵害となる。
・フィギュア写真の著作権は撮影者にあるが、それは二次的著作物の著作権であり、原作者の許可なしに権利を行使することはできない。
となります。
つまり「ごく少数の仲間内でSNSを使わずフィギュア写真を楽しむ」のであれば違法とはなりませんが、ネット上で活動した時点で各著作権の侵害となる可能性が高いです。
以前ネットで著作権のことを調べた際には「フィギュア写真は三次元→二次元だから複製じゃない、セーフ!」という暴論も見かけましたが、
先ほど例に挙げた「小説→漫画→アニメ」のようにフィギュア撮影も表現方法を変えただけであり、フィギュア写真が一次著作物である元のデザイン、その二次著作物であるフィギュアを使用した三次著作物であることは明らかです。
私の撮影しているポケモンキッズであれば任天堂とBANDAIの許可を得ない限りは翻案権の侵害となるでしょう。
結論を言えば私も含めて、フィギュア写真を撮影してネットに公開することは、
「グレーゾーン」ではなく明らかに「黒」であると言えます。
同じ理屈で、既存キャラクターを模した絵・フィギュア・アクセサリーをSNSに上げたり、販売したりすることも著作権の侵害になることは明らかでしょう。
4.なぜ二次創作が発展しているのか
では、なぜ違法であるのに日本では二次創作文化がここまで発展しているのでしょうか。
フランスやスペインでは「パロディ規定」という「パロディやパスティーユ、風刺は許す」と明文された規定があり、アメリカでは「原作で市場に損害を及ぼさない公正な利用は許す」と規定した「フェアユース」という例外規定があります。
日本にこのような明確な例外規定はありません。
それでも二次創作文化が花開いた理由について、著作権を専門とする弁護士、福井健策氏は「権利者と二次創作者の『阿吽の呼吸』で二次創作は育まれてきた」と著書で述べています。
創作者側は「どこまでなら怒られないか」、権利者側は「どこまでなら放置するか」距離感を測りながら、互いにWin-Winの関係になるラインを保っているというわけです。
この関係が成立するのは、日本が暗黙の了解をよく承知する文化であるからということもありますが、他国と違って二次創作に対する刑事告訴が親告罪となっていることが大きいです。
即ち権利者自身が悪質だと判断して刑事告訴しない限り、起訴・処罰はされません。
つまり違法であっても権利者がセーフと言えばセーフだし、第三者が「それは著作権侵害だ!」と言っても意味がない訳です。
こうした現状を鑑みて、2013年に文化庁が出した「パロディと著作権」についての調査報告書においても「日本ではパロディ規定のような明文のルールをすぐに導入するより、現状を温存する方が良いかもしれない」という趣旨の報告書が発表されています。
5.二次創作に対する告訴
前章で述べた通り、著作権侵害は親告罪であるため権利者が腰を上げないと告訴に至らず、日本において二次創作が起訴されることは多くありません。
先ほど「阿吽の呼吸」と言う表現を紹介しましたが、この呼吸が崩れた時に企業が二次創作を訴える事態が起こります。
1998年に起きた二次創作界隈の有名な事件として「ポケモンアダルト同人誌事件」というものがあります。名の通りポケモンのアダルト同人誌を300部ほど印刷・売買したことをゲームフリークが告訴したものであり、制作者は逮捕され10万円の罰金を課されました。
この事件には先ほど挙げた5つの著作権には含まれない、同一性保持権というものが関わってきます。
これは複製といった著作権者の許可の有無に関わらず、「著作者の意に反するような改変は著作者人格権を侵害する」という法律です。
要するに著作物に対する名誉毀損のようなものです。
著作権について、ポケモン側は公式サイトでこのように述べています。
"キャラクター・画像・音楽の使用につきましては、法律により認められた範囲内での使用に留めていただき、それを超える利用につきましては控えていただきますようお願いいたします。特に、キャラクターのイメージを損なうような画像などをインターネットへアップロードするのはご遠慮ください。"
http://www.pokemon.co.jp/support/other_inquiry/#q01
法律に従うよう忠告した上で、「特に」と強調して同一性保持権の遵守を呼びかけられています。
二次創作は違法であれ見逃されることが多いですが、それが同一性保持権、即ちキャラクターのイメージを損なうようなものであった場合、告訴に至る可能性が高くなると考えられます。
6.二次創作者はどうすればいいのか
結局、我々二次創作を趣味とする者たちはどうすればいいのか。
綺麗事を言えば、SNSやブログ、コミケをやめて個人で細々と楽しむのが最適解なのでしょう。
しかし、ここまで身近な場所で二次創作がオープンに行われている中で細々と楽しむのでは、欲求不満に陥ってしまいコンテンツ自体から去ってしまう人も少なくないでしょう。
今まで述べてきた内容を踏まえて、私が得た結論は
「原作へのリスペクトを忘れず、二次創作活動を行う」
これに尽きると思います。
具体的には、
自分の二次創作は権利者の利益を損なわないか、原作のイメージを損なわないか、創作する前に必ず立ち止まって考えること。
そして創作したものを世に出す時は説明を怠らないことです。
これは自分の活動が「原作者が儲かって作品が存続することで初めて成り立つものである」という「原作へのリスペクト」を忘れなければ、自ずと弁えられることだと思います。
私のポケモン撮影の活動も、違法であるが見逃してもらっているという事実と、ポケットモンスターの全コンテンツへのリスペクトを忘れず、地に足をつけて続けていきたいと思います。
ここまで長文を読んでくださった方、ありがとうございました。
それらしいことを書いていますが、所詮理系大学生が1日勉強しただけの内容ですので至らない部分もあると思います。
誤解している箇所等あればコメントやTwitter等でご教授していただけるとありがたいです。
<参考文献>
文化庁(2013)『著作権法入門 2013-2014』 公益社団法人 著作権情報センター
公益社団法人 日本写真家協会(2016)『写真著作権 第2版』太田出版
福井健策(2015)『18歳の著作権入門』株式会社精興舎
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